🎸『飛翔伝説〜M.S.G.武道館ライヴ』徹底レビュー|なぜ40年経った今も心を揺さぶるのか?
作品との出会い、いま改めて読み解く理由
80年代初頭、日本の音楽ファンにとって「武道館ライヴ」は特別な響きを持っていた。中でも1981年、日本のHR/HMファンを震わせたのが、THE MICHAEL SCHENKER GROUP(MSG)の『飛翔伝説〜M.S.G.武道館ライヴ(One Night at Budokan)』だ。
音が飛び、感情が裂け、空気が叫んだあの夜。LPの針を落とした瞬間から立ち上がる歓声に、思わず当時の温度まで蘇る。
なぜ今、このアルバムが再び注目を集めているのか?それは「ライブとは何か?」という問いが、デジタル全盛のいま、かえってリアルな体験として響き始めているからかもしれない。
この作品は、完璧でなくとも心に刺さる“人間味ある名盤”の真骨頂だ。
基本情報|リリース年・レーベル・完全版仕様など
| 項目 | 内容 |
| リリース日 | 1981年12月21日(日本先行発売)、1982年2月(海外) |
| ジャンル | ハードロック、ヘヴィメタル |
| レーベル | Chrysalis Records(クリサリス・レコード) |
| 収録曲数 | 13曲(完全版では15曲) |
| 総再生時間 | 約93分29秒(完全版) |
トラックリスト(完全版)
| # | 曲名 |
| 1 | Armed and Ready |
| 2 | Cry for the Nations |
| 3 | Attack of the Mad Axeman |
| 4 | But I Want More |
| 5 | Victim of Illusion |
| 6 | Into the Arena |
| 7 | On and On |
| 8 | Never Trust a Stranger |
| 9 | Let Sleeping Dogs Lie |
| 10 | Courvoisier Concerto |
| 11 | Lost Horizons |
| 12 | Doctor Doctor |
| 13 | Are You Ready to Rock |
| 14 | Tales of Mystery(完全版) |
| 15 | Cozy Powell Drum Solo(完全版) |
※オープニングSEとして「ワルキューレの騎行」が挿入されている
メンバー
| 名前 | 担当 |
| Michael Schenker | リードギター |
| Gary Barden | ボーカル |
| Chris Glen | ベース |
| Cozy Powell | ドラムス |
| Paul Raymond | キーボード、リズムギター、バッキング・ボーカル |
※追加ミュージシャンなし(ライブ演奏のみ)
リマスター・再発情報
| 年 | 詳細 |
| 1989年 | 初CD化(日本CP21-6055) |
| 2001年 | 完全版としてリマスター再発(TOCP-65820-21) |
| 2009年 | 英欧リマスター版(CTYX 1375) |
| 2012・2014年 | 帯デザイン変更再発(TOCP-54370-71 / WPCR-80148/9) |
商業的成績
| 地域 | チャート最高位 |
| 日本(オリコン) | 25位(10週ランクイン) |
| イギリス | 5位(11週ランクイン) |
| オランダ | 30位 |
| スウェーデン | 44位 |
- 英国:シルバー認定(6万枚以上)
- 日本:マイケル&コージー効果で異例の武道館先行ライブ盤として話題に
音質・アレンジ・パッケージで味わう再評価ポイント
再発された“完全版”は、単なる曲数の追加にとどまらない。「Tales of Mystery」のドラマ性、「Drum Solo」の野生的な迫力、そしてワーグナー「ワルキューレの騎行」の荘厳なオープニングSEは、聴き手を一気に武道館へ引き戻してくれる。
2001年以降のリマスターでは、音圧・定位ともに向上し、中低域の厚みも増した。とりわけポール・レイモンドのキーボードが空間に“奥行き”を与えており、当時のPAでは聴き取れなかった細部までクリアに再現されている。
パッケージとしても、初期盤のスモーキーなジャケットから、2000年代リマスターでの高精細写真やブックレットまで、コレクションとしての満足度も高い。
当時の背景と、今だから響く文化的・世代的意義
あの時代、日本における洋楽HR/HM熱はピークを迎えていた。ラジオからはMSG、UFO、RAINBOWが流れ、テレビでは「ベストヒットUSA」で洋楽チャートが可視化され、MTVが世界を変えようとしていた。
そして「武道館」は、クイーンやチープ・トリックも名演を残した“聖地”であり、MSGがそこに足を踏み入れたこと自体が「事件」だったのだ。
その象徴が、この『One Night at Budokan』。マイケルの情念あふれるギター、コージーの雷鳴のようなドラム、観客の歓声。すべてが"記録"であると同時に"記憶"である。
若い世代には、ぜひこのアルバムを通して「ライブとは何か?」を感じてほしい。それは“観る”ものではなく、“感じる”ものなのだと。
私的おすすめポイント:あの夜を超える瞬間が、ここにある
長年このアルバムとともに生きてきた筆者として、特に強く心に残っているのが「Lost Horizons」から「Doctor Doctor」への流れ。浮遊感と切なさ、そして一転して爆発するロックアンセム。これぞMSGの真骨頂だ。
そして「Into the Arena」。このインストゥルメンタルには、言葉すら超えた熱情がある。ステージに立つ男たちの“背中”が見えるような、そんな音だ。
自分が若いころ、夜明けの国道をこのアルバムと一緒に走った思い出も蘇る。ラジカセから鳴る音の粒が、やけに大きく感じたあの頃。
まとめ|次の世代にも伝えたい“ライブ”の奇跡
『飛翔伝説〜M.S.G.武道館ライヴ』は、単なるアーカイブではない。時間も場所も越えて、音楽の“魂”を届けてくれる希有な一枚だ。
🎧 音楽を「記録」でなく「記憶」として残したい
🎸 演奏の“熱”を感じる作品を探している
📀 HR/HMの入り口になる1枚を求めている
そんな方には迷いなく薦めたい。


