SYMPHONY X『Twilight In Olympus』再発掘レビュー:神話世界を描いたネオクラシカル・メタルの金字塔
出会いの記憶と、今改めて語りたくなる理由
90年代後半。当時の音楽シーンは、グランジとオルタナティブの熱狂が一段落し、HR/HMは次の進化形を模索していた。そんな中で登場したSYMPHONY Xの『Twilight In Olympus』は、ネオクラシカルな構築美とプログレッシブなドラマ性で、異彩を放っていた一枚だ。
このアルバムとの出会いは偶然だったが、ギリシャ神話を想起させるそのスケール感と、楽曲の緻密さに魅了され、気がつけば何度もリピートしていた。あの衝撃は、今も耳と心に焼き付いている。
そして今、リイシューや再評価が進む中で改めて聴き返してみると、この作品が放つ深い知性と情熱は、世代を超えて響くものがあると感じずにはいられない。
基本情報:1998年リリース、神話と技巧の融合作
| 項目 / Item | 内容 / Details |
| リリース日 / Release Date | 1998年3月(日本盤は1998年2月25日) |
| ジャンル / Genre | プログレッシブ・メタル、ネオクラシカル・メタル、パワー・メタル |
| レーベル / Label | Zero Corporation(日本)、Inside Out Music(欧米) |
| 収録曲数 / Number of Tracks | 8曲 |
| 総再生時間 / Total Runtime | 約52分40秒 |
トラックリスト
| # | 曲名 / Song Title |
| 1 | Smoke and Mirrors |
| 2 | Church of the Machine |
| 3 | Sonata (Instrumental) |
| 4 | In the Dragon's Den |
| 5 | Through the Looking Glass (Parts I, II, III) |
| 6 | The Relic |
| 7 | Orion – The Hunter |
| 8 | Lady of the Snow |
メンバー / Personnel
| 名前 / Name | 担当楽器・役割 / Instrument & Role |
| Russell Allen | リードボーカル / Lead Vocals |
| Michael Romeo | ギター、シタール、ミニハープ、バッキングボーカル |
| Thomas Miller | ベース、バッキングボーカル |
| Tom Walling | ドラムス |
| Michael Pinnella | キーボード、バッキングボーカル、ナイフ&チェーンソー・ジャグリング |
音作りと構築美:重厚でありながら透明、技巧と叙情のバランス
『Twilight In Olympus』は、前作『The Divine Wings of Tragedy』で確立した壮大な音楽世界をさらに推し進めた意欲作だ。メロディはより抒情的に、アレンジはより緻密に。
Michael Romeoのギターは、切れ味鋭いリフとリリカルなソロで緩急を操り、Michael Pinnellaのキーボードはクラシックの風格を纏った幻想的なレイヤーを加える。重さで押すのではなく、構築の美学で魅せる――その方向性が今も色褪せない理由だ。
また、2004年にはInside Outよりスペシャル・エディション再発盤が登場。デジパック仕様に加え、当時としては珍しいインタビュー映像やスクリーンセーバーといったマルチメディア要素も搭載されていた。
あの頃の空気と今の視点:世代をまたぐ芸術作品としての魅力
1998年当時、メタルファンにとっては「様式美」と「技巧」が再び評価され始めたタイミングだった。その流れを象徴するようにSYMPHONY Xが提示したこのアルバムは、まるで“時代から隔絶された美”のような存在感を持っていた。
それから四半世紀以上。今聴いても、その構成力と叙情性は新鮮そのもの。「Through the Looking Glass」の13分に及ぶ大作や、日本の伝承にインスパイアされた「Lady of the Snow」など、物語性と音楽性が高次元で融合している。
いまの若い世代が聴いても、この濃密な叙景とスピリチュアルな熱量に、何かを感じるのではないだろうか。
聴きどころと私的推薦曲:リアルタイム世代が語る推しポイント
まず強調したいのは、「Church of the Machine」の無機質で近未来的なイントロから一気に叙情とテクニックが爆発する展開。初めて聴いたとき、鳥肌が立った瞬間はいまだに鮮明に覚えている。
そして「Sonata」や「Orion – The Hunter」のインストゥルメンタルパートで交錯するギターとキーボードのバトルは、何度聴いても新たな驚きを与えてくれる。あの火花が散るような掛け合いは、まさにこの時代ならではの贅沢だ。
『Twilight In Olympus』は、単なる技巧の披露ではなく、“美”そのものを音楽で描こうとしていたアルバムだと思う。
まとめ:神話が音となった一枚。次の扉を開くきっかけに
SYMPHONY Xの『Twilight In Olympus』は、ネオクラシカル・メタルというジャンルの中でも、ひときわ輝きを放つ存在だ。その精緻な構築美、技巧と叙情が混ざり合う音世界は、今この時代にこそ新たな意味を帯びて響いてくる。
もしまだ未聴であれば、ぜひこの機会に触れてほしい。そして、すでに知っている方には、再び針を落としてみることをおすすめしたい。そこには、きっと新たな感動と発見が待っている。
