#イングヴェイ・マルムスティーン『The Seventh Sign』再訪:ネオクラシカルから羽ばたいたHRという“第七の徴”
ジャケットがUS盤、UK盤、日本盤(元はイングヴェイの顔に緑色が入ってました)で違います。音楽の転換期に届いたギターヒーローの「兆し」
90年代初頭、ハードロック/ヘヴィメタル界には陰りが見え始めていた。グランジ旋風が吹き荒れる中で、煌びやかな速弾きや壮麗な旋律は“時代遅れ”と呼ばれ始めていたからだ。だがそんな空気の中、イングヴェイ・マルムスティーンは躊躇なく「第七の兆し」を鳴らした——それが1994年作『The Seventh Sign』である。
筆者自身、彼の初期作品に胸を焦がしながらギターを握っていた世代だ。だからこそ、本作が従来のネオクラ路線から一歩踏み出した「ハードロック作品」として届けられたときの衝撃と好奇心は、今も鮮明に記憶している。
本作を今、あらためて聴き直す理由。それは、イングヴェイがただの速弾き職人ではなく、アンサンブルの妙とサウンドの進化に果敢に挑んだ“クリエイター”だったことを再確認するためだ。
基本情報:時代を切り拓いた13のサイン
| 項目 / Item | 内容 / Details | |
| リリース日 / Release Date | 1994年5月9日(欧州) / 日本盤は1994年2月18日 | |
| ジャンル / Genre | ネオクラシカル・メタル、ヘヴィメタル | |
| レーベル / Label | Music for Nations(欧州)、Pony Canyon(日本) | |
| 収録曲数 / Number of Tracks | 13(日本盤ボーナストラック含む) | |
| 総再生時間 / Total Runtime | 約48分31秒(日本盤:約52分45秒) |
トラックリスト
| # | 曲名 / Song Title | |
| 1 | Never Die | |
| 2 | I Don't Know | |
| 3 | Meant to Be | |
| 4 | Forever One | |
| 5 | Hairtrigger | |
| 6 | Brothers (Instrumental) | |
| 7 | Seventh Sign | |
| 8 | Bad Blood | |
| 9 | Prisoner of Your Love | |
| 10 | Pyramid of Cheops | |
| 11 | Crash and Burn | |
| 12 | Sorrow (Instrumental) | |
| 13 | Angel in Heat(日本盤ボーナストラック) |
メンバー
| 名前 / Name | 担当楽器・役割 / Instrument & Role | |
| Yngwie Malmsteen | Guitar, Bass, Sitar, Vocals (Track 13), Producer | |
| Michael Vescera | Vocals | |
| Mats "Thailand" Olausson | Keyboards, Hammond Organ | |
| Mike "The Spike" Terrana | Drums, Triangle |
追加ミュージシャン
| 名前 / Name | 担当楽器・役割 / Instrument & Role | |
| Jim Thomas | Engineering | |
| Jeff Glixman | Engineering | |
| Mike Fraser | Mixing | |
| Keith Rose | Mixing Assistant |
音質と構成の進化:リマスター再発盤の魅力
2003年にドイツのSPV/Steamhammerからリマスター盤がリリースされ、さらに2011年のMP3再発、2013年のHDCD仕様による日本盤再発(Pony Canyon)へと続く本作。特に2013年のHDCD再発盤では、「Angel in Heat」を含むボーナストラックの復活に加え、音圧や解像度の改善が高く評価されている。
初期盤に比べ、各パートの分離感が向上し、ドラムやヴォーカルがより肉厚に聴こえる。この違いは、往年のファンのみならず、今だからこそ“良音”で体感したい新世代リスナーにも響くはずだ。
HRにシフトした意図と時代の空気
90年代前半、時代はグランジへと傾き、ギターヒーローの居場所は揺らいでいた。そんな中で本作が選んだのは「ネオクラシカルの脱皮」である。とはいえ、完全に過去を捨てたわけではない。イングヴェイらしい速弾き、バロック調の旋律、ブリッジでの叙情性はしっかりと息づいている。
鍵を握るのは、LOUDNESSのヴォーカリストとしても知られるマイケル・ヴェスピラの存在。彼のハイトーンかつソウルフルな声は、従来のネオクラ寄りシンガーとは異なる太さと哀愁を楽曲に添えている。そしてそれに呼応するかのように、マイク・テラーナのドラムが剛毅なビートで牽引していく。
ハイライトと個人的推しトラック
個人的に心を打たれたのは、エモーショナルなバラード「Forever One」、イングヴェイ節が炸裂する「Hairtrigger」、そしてファンタジックなスケールを感じさせる「Pyramid of Cheops」。中でも「Seventh Sign」は、本作を象徴する1曲。リフの重厚感とクラシカルな旋律が融合し、90年代型イングヴェイの代表格として再評価されるべきだろう。
あの頃、MDに録音して何度も聴いた記憶がある。通学電車の窓に映る風景とこのアルバムのサウンドが、いまだにリンクしている。それだけ強い印象を残す作品なのだ。
終わりに:もう一度、「聴く準備」はできているか
『The Seventh Sign』は、単なるネオクラの延長ではない。イングヴェイ・マルムスティーンというアーティストが、時代の逆風のなかで選んだ“バンド型HR”の挑戦作である。その結果が、オリコン2位/プラチナ獲得(日本)の商業的成功にも繋がっている。
今こそこのアルバムを再生し、あの“第七の兆し”を自分の耳で確かめてみてはいかがだろうか。ハードロックの歴史と個人の記憶が、静かに、しかし力強く交錯する瞬間が訪れるはずだ。



