METALLICA『...And Justice For All』──音で語る“正義”の重みと再生
作品との出会い、今読み解く理由
あの衝撃が、今でも胸の奥に残っている──1988年、METALLICAの『...And Justice For All』を初めて聴いた時、音楽がこんなにも「正義」を語れるのかと、深く揺さぶられたものです。
それは、単なるヘヴィメタルアルバムではありませんでした。社会への憤り、喪失の痛み、そして希望の種が、怒涛のリフと技巧的な構築美に包まれていた。大人になるほどに、この作品の言葉と音の意味が刺さってくるのです。
そして今、このアルバムが再び注目されている理由はただ一つ。時代が、また“正義”を問う局面にあるから──。
基本情報:正義の構造美が刻まれた一枚
| 項目 / Item | 内容 / Details |
| リリース日 / Release Date | 1988年9月7日(米国) |
| ジャンル / Genre | Thrash Metal / Progressive Metal |
| レーベル / Label | Elektra Records(オリジナル) / Blackened Recordings(再発) |
| 収録曲数 / Number of Tracks | 10(日本盤のみボーナス1曲) |
| 総再生時間 / Total Runtime | 約65分24秒 |
トラックリスト
| # | 曲名 / Song Title |
| 1 | Blackened |
| 2 | ...And Justice for All |
| 3 | Eye of the Beholder |
| 4 | One |
| 5 | The Shortest Straw |
| 6 | Harvester of Sorrow |
| 7 | The Frayed Ends of Sanity |
| 8 | To Live Is to Die |
| 9 | Dyers Eve |
| 10 | THE PRINCE(Diamond Headのカバー / 日本盤限定) |
メンバー / Personnel
| 名前 / Name | 担当楽器・役割 / Instrument & Role |
| James Hetfield | Vocals, Rhythm Guitar, Production |
| Kirk Hammett | Lead Guitar |
| Jason Newsted | Bass |
| Lars Ulrich | Drums, Production |
追加ミュージシャン
| 名前 / Name | 担当楽器・役割 / Instrument & Role |
| Mike Clink | Drum Engineering(Track 5 & 6) |
| Toby Wright | Assistant Engineering |
音質・アレンジ・パッケージ:30年越しの“音の正義”
2018年11月、発売30周年を記念したリマスター盤が登場。監修はGreg Fidelman(『Hardwired…』も手がけたプロデューサー)で、フォーマットは1CD、3CD、LP、カセット、デジタルと多彩。特にデラックス版では、未発表ライブ音源やデモ、バンドの手書きノートなどを含む豪華仕様がファンの心を震わせました。
注目すべきは、あの“ベースが埋もれたミックス”のまま再現されたこと。敢えて手を加えず、当時の意図と苦悩をありのまま残したFidelmanの姿勢は、“正義の音像”そのものでした。
文化的・世代的な意義:闘いを音に刻んだ一枚
『...And Justice For All』が切り取ったのは、冷戦末期の空気、政治不信、そして失われた命の重みです。1986年のベーシスト、クリフ・バートンの事故死という悲劇を乗り越え、ジェイソン・ニューステッドを迎えて作られた本作は、痛みを超えた再生の証。
シングル「One」は、映画『ジョニーは戦場へ行った』の映像を交えたモノクロPVによって社会的メッセージを伝え、MTV経由で全米に衝撃を与えました。このPVこそ、メタルが「ただの音楽」ではないことを世界に示した一撃であり、ジャンルの主流化の転換点となりました。
筆者のおすすめポイント:忘れえぬ“痛み”と“祈り”
私が今でも繰り返し聴くのは「To Live Is to Die」。インストゥルメンタルでありながら、亡きクリフへの哀悼と、生きることへの問いが静かに響く。そのメロディは、語らずとも語るのです。
そして、オープニングの「Blackened」からエンディングの「Dyers Eve」まで、まるで一冊の小説を読んでいるような流れ。怒り、疑問、沈黙──それらが、ただならぬ説得力で音となって迫ってくる。この“重み”こそが、METALLICAの真骨頂だと感じています。
まとめ:このアルバムが問う“あなたの正義”とは
『...And Justice For All』が響かせたのは、時代に向けた挑戦状。それは、今を生きる私たちにも届いているのではないでしょうか。
再発盤であらためて聴いた方も、初めて触れる若い世代も──あなた自身の耳で「音の正義」を受け止めてみてください。そして、この問いを続けてください。「正義とは、誰のためにあるのか?」
🖋️ 筆者あとがき:
私自身、リアルタイムでこの音を浴びて育ちました。混沌の中に正義を求める音楽──その衝撃が、今なお私の原点です。HR/HMを語る時、決して避けて通れないこの一枚。その力を、次の世代にも伝えていけたらと思います。

