AEROSMITH『Night in the Ruts』(1979年)
― 崩壊寸前のバンドが放った、剥き出しのロック魂
- AEROSMITH『Night in the Ruts』(1979年)
- 音質・アレンジ・パッケージの魅力と再評価
- 商業的成績 / Commercial Performance
- 文化的・世代的な意義 ― 崩壊と再生の狭間で
- 筆者のおすすめポイント ― 心に残る3曲とその理由
- まとめ ― あなたにとっての『Night in the Ruts』を探して
- ♪ 参考音源 / Reference Audio
- 💿 通販 / Purchase Links
出会い直すべき理由 ― 今こそ響く“未完成の美学”
1979年、AEROSMITHはまさに“崖っぷち”に立たされていました。
メンバー間の不和、ドラッグ問題、そしてギタリストのジョー・ペリー脱退――。
そんな混沌の中で生まれた『Night in the Ruts』は、整いすぎたロックでは決して味わえない“むき出しのエネルギー”に満ちています。
あの時代をリアルタイムで体感した世代には懐かしさと共鳴を、若いリスナーには“ロックの本質”を伝える一枚。
今こそ、このアルバムにもう一度耳を傾けてみませんか?
基本情報 ― リリースと再発仕様
項目 | 内容 |
---|---|
リリース日 | 1979年11月16日 |
ジャンル | ハードロック、ブルースロック |
レーベル | Columbia Records |
収録曲数 | 9曲 |
総再生時間 | 35分41秒 |
リマスター / 再発 | 1993年:20ビットSBMデジタル・リマスター盤(Sony)/2023年:Capitol Recordsより再発 |
トラックリスト / Track Listing
# | 曲名 / Song Title |
---|---|
1 | No Surprize |
2 | Chiquita |
3 | Remember (Walking in the Sand) |
4 | Cheese Cake |
5 | Three Mile Smile |
6 | Reefer Head Woman |
7 | Bone to Bone (Coney Island White Fish Boy) |
8 | Think About It |
9 | Mia |
メンバー / Personnel
名前 / Name | 担当楽器・役割 / Instrument & Role |
---|---|
スティーヴン・タイラー | ボーカル |
ジョー・ペリー | ギター、バッキング・ボーカル |
ブラッド・ウィットフォード | ギター |
トム・ハミルトン | ベース |
ジョーイ・クレイマー | ドラムス、パーカッション |
追加ミュージシャン / Additional Musicians
名前 / Name | 担当楽器・役割 / Instrument & Role |
---|---|
リチャード・スパ | ギター (1, 9) |
ジミー・クレスポ | ギター (5) |
ニール・トンプソン | ギター (9) |
ジョージ・ヤング | アルト・サックス (2) |
ルー・マリニ | テナー・サックス (2) |
ルー・デル・ガット | バリトン・サックス (2) |
バリー・ロジャース | トロンボーン (2) |
音質・アレンジ・パッケージの魅力と再評価
“完璧ではない”が、だからこそリアル
このアルバムのミックスは決して整っていません。
定位の甘さ、ざらついた質感、そして時折感じるライブのような臨場感――
これらすべてが、「完璧ではないが、リアルな時代の記録」としての魅力を宿しています。
再発盤では音の粒立ちが向上し、ギターやドラムの力強さがより際立ちます。
1993年のSBMリマスターでは、細部のニュアンスまでクリアに感じ取れる仕上がり。
それでも荒々しさは健在で、“音が闘っている”感触がそのまま残っているのが、この作品の醍醐味です。
商業的成績 / Commercial Performance
『Night in the Ruts』は、制作時の混乱にも関わらず、一定のヒットを記録しました。
- アメリカ:Billboard 200で最高14位
- 日本:オリコンチャートで最高39位
- シングル:「Remember (Walking in the Sand)」は全米シングルチャートで67位をマーク
この数字からも、AEROSMITHというバンドの底力と、熱心なファン層の厚みがうかがえます。
文化的・世代的な意義 ― 崩壊と再生の狭間で
1970年代末のロックシーンは、ディスコの隆盛、パンクの台頭といった激動の時代。
AEROSMITHはそんな潮流の中で、自らの原点=ブルースとハードロックの融合に立ち返ろうとしていました。
ジョー・ペリーの離脱は、バンドに大きな衝撃を与えましたが、それが音楽的多様性や新たなギタリストの個性を浮かび上がらせる結果にもなっています。
このアルバムには、崩れかけたバンドが“音楽”だけは信じていた証拠が刻まれているのです。
筆者のおすすめポイント ― 心に残る3曲とその理由
「No Surprize」
オープニングを飾る、スピード感と自嘲のブレンド。
「俺たちがロックスターになったって?驚くことじゃないさ。」という歌詞に、当時の諦観と矜持が交錯します。
🎧 鋭利なギターとタイトなドラムが秀逸。
「Remember (Walking in the Sand)」
60年代ガールズグループの名バラードを、陰影と重厚感を加えたロックバージョンへと昇華。
🎧 夜の街をひとりで歩くような、切なさが胸に迫ります。
「Mia」
スティーヴン・タイラーが娘に捧げた美しいラストバラード。
崩れた世界に優しさを取り戻すような、温もりあるエンディング。
🎧 アルバム全体の荒々しさと美しく対照的。
まとめ ― あなたにとっての『Night in the Ruts』を探して
『Night in the Ruts』は、商業的に大成功を収めたアルバムではありません。
しかし、だからこそこの作品には、AEROSMITHが“闘っていた瞬間”の痕跡が息づいているのです。
流行に乗るのではなく、自らのルーツを貫くロック――
それは今の時代にも通じる“誠実さ”ではないでしょうか。
カセットテープを巻き戻して繰り返し聴いたあの頃のように、
今こそ、音楽に心を奪われてみませんか?
♪ 参考音源 / Reference Audio
💿 通販 / Purchase Links