- 炎と氷、その狭間で鳴り響くギター:イングヴェイ・マルムスティーン『Fire And Ice』再考察
- 基本情報 / Basic Information
- 楽曲の魅力と構成美に迫る:『Fire And Ice』の聴きどころ
- トラックリスト / Track Listing
- メンバー / Personnel
- 参考音源
- 通販
炎と氷、その狭間で鳴り響くギター:イングヴェイ・マルムスティーン『Fire And Ice』再考察
1992年、音楽シーンがグランジとオルタナティブ・ロックに席巻される中で、一人のギタリストがあくまでも己の信念を貫き、独自の進化を遂げていました。イングヴェイ・マルムスティーン、その名前は80年代のギターヒーローという枠を越え、"ネオクラシカル・メタル"というジャンルそのものを築いた存在です。
その彼が放った意欲作が――『Fire And Ice』。
一聴して派手さこそ控えめに映るかもしれません。しかしこのアルバムには、時間とともに深まる滋味が確かにあります。そして今こそ、その真価を改めて見直すべき時なのではないでしょうか。
基本情報 / Basic Information
| 項目 / Item | 内容 / Details |
| リリース日 / Release Date | 1992年2月7日(日本盤:1992年1月7日) |
| ジャンル / Genre | ネオクラシカル・メタル、ハードロック |
| レーベル / Label | Elektra / Warner Music Japan |
| 収録曲数 / Number of Tracks | 15(日本盤ボーナストラック含む) |
| 総再生時間 / Total Runtime | 約64分38秒 |
楽曲の魅力と構成美に迫る:『Fire And Ice』の聴きどころ
オーケストラとエレキの邂逅
このアルバム最大の特徴は、クラシック音楽の要素――特にストリングスを大胆に取り入れた点にあります。オーケストラが単なる装飾に終わらず、曲そのものの感情の高まりと連動するように仕掛けられており、イングヴェイの音楽的ルーツと未来志向が手を取り合うかのようです。
主張と抒情の融合:選りすぐりのトラック解説
「How Many Miles to Babylon」
厳かでスケール感のあるこの楽曲は、まるでオペラの一幕のよう。オーケストラとバンドサウンドが丁寧に溶け合い、過去と未来を結ぶ架け橋のような存在です。
「No Mercy」
攻撃的なギターリフとバッハ的モチーフの融合。その“らしさ”に胸を打たれるファンも多いのでは。ライブでも度々演奏される定番曲です。
「Teaser」
「異色」と語られがちなこのポップス調ナンバーですが、アルバム全体の緊張感の中で、むしろ良質な“ブレイク”として作用していると感じています。まさに“余白の妙”。
トラックリスト / Track Listing
| # | 曲名 / Song Title |
| 1 | Perpetual (Instrumental) |
| 2 | Dragonfly |
| 3 | Teaser |
| 4 | How Many Miles to Babylon |
| 5 | Cry No More |
| 6 | No Mercy |
| 7 | C’est la Vie |
| 8 | Leviathan (Instrumental) |
| 9 | Fire and Ice |
| 10 | Forever Is a Long Time |
| 11 | I’m My Own Enemy |
| 12 | All I Want Is Everything |
| 13 | Golden Dawn (Instrumental) |
| 14 | Final Curtain |
| 15 | Broken Glass(日本盤ボーナストラック) |
メンバー / Personnel
| 名前 / Name | 担当楽器・役割 / Instrument & Role |
| Goran Edman | Lead Vocals |
| Yngwie Malmsteen | Guitar, Moog Taurus, Sitar, Backing Vocals, Strings Arrangement, Producer |
| Svante Henrysson | Bass, Cello, Strings Arrangement Assistance |
| Bo Werner | Drums (except track 8) |
| Mats Olausson | Keyboards |
追加ミュージシャン / Additional Musicians
| 名前 / Name | 担当楽器・役割 / Instrument & Role |
| Michael Von Knorring | Drums (track 8 only) |
| Per Högberg | Viola |
| Ulf Forsberg | Violin |
| Svein-Harald Martinsen | Violin |
| Kalle Moraeus | Violin |
| Lolo Lannerbäck | Flute |
リマスターと再評価:『Fire And Ice』が今、ふたたび注目される理由
リマスター盤と音質の刷新
2017年、HNE RecordingsよりAndy PearceとMatt Worthamによるリマスター盤がリリース。よりクリアかつダイナミックな音像が再構築され、当時聴き逃していた細部が新たな発見としてよみがえります。
チャート成績と商業的成功
- 日本:オリコン初回限定盤1位、通常盤16位(10週ランクイン)
- アメリカ:Billboard 200で121位
- スウェーデン:11位、スイス:30位、オランダ:89位
- ゴールドディスク認定(日本)
「Teaser」「No Mercy」はシングルカットされ、PVも制作。時代のメインストリームに抗う作品ながら、日本での人気の高さは特筆に値します。
あの時代に生きたからこそ、今わかる感情がある
グランジが世界を覆いはじめていた1992年、あえて自分の信じる音楽――クラシックとロックの結晶――に回帰したイングヴェイ。その姿勢に、当時の自分は強く心を打たれました。
どんな時代にも、譲れない音がある。そんな信念に共鳴したことを、今もはっきりと覚えています。
今だからこそ響く“名盤”の鼓動
『Fire And Ice』は、ただの過去の作品ではなく、“再発見されるべき価値”を秘めた名盤です。もしまだ手に取っていないなら、静かな夜にぜひ一度、じっくりと耳を傾けてみてください。あの「炎と氷」が、今のあなたの中でどんな風景を描くのか――聴いてみる価値は、きっとあるはずです。

