今回取り上げる Alter Bridge のアルバム『ALTER BRIDGE』 は、
20年という歳月を経て、彼らが自らの名を冠して世に送り出した作品です。
2000年代初頭、Creedからの脱却を掲げて始まったこのバンドの歩みを、
私はずっと、少し離れた場所から見つめてきました。
その音には、いつも“誠実さ”と“飢え”が宿っていて、
どこか80年代のHR/HMが持っていた熱量と、静かな哀愁を感じさせてくれたのです。
けれど、セルフタイトルという選択には、正直少し驚きました。
それは、バンドの“始まり”を思わせる響きでありながら、
同時に“終着点”のような重みも感じさせる言葉だからです。
5150スタジオという伝説の地で録音されたという事実もまた、
この作品に特別な空気をまとわせています。
マーク・トレモンティが「一生に一度の機会だった」と語ったその場所で、
彼らは何を見つめ、何を刻み込んだのでしょうか。
今日は、そんな Alter Bridgeの20年の旅路が静かに結晶化した一枚 を、
そっと語らせてください。
あの頃の記憶と、今だからこそ感じられる響きの深さを、大切にしながら。
▼ SETLIST(目次)
📊 Alter Bridge『ALTER BRIDGE』作品データと基本情報
| 項目 | 内容 | 補足 |
|---|---|---|
| 作品タイトル | 『ALTER BRIDGE』 | セルフタイトル |
| アーティスト名 | Alter Bridge | 正確な表記必須 |
| リリース日 | 2026年1月9日 | バンド結成20周年の節目 |
| ジャンル | ハードロック/オルタナティブ・メタル(HR/HM) | メロディックで重厚な音像 |
| レーベル | Napalm Records | 前作『Pawns & Kings』に続き |
| 収録曲数 | 12曲 | 先行シングル4曲含む |
| 総再生時間 | 60分39秒 | 1時間超の濃密な構成 |
🌏 作品概要──『ALTER BRIDGE』が放つ核心
Alter Bridgeが、自らの名を冠したアルバムをリリースする──
その報せを聞いたとき、私は少しだけ胸がざわつきました。
セルフタイトルという選択は、バンドにとって“始まり”であると同時に、
“すべてを注ぎ込んだ証”でもあるからです。
2004年のデビューから20年。
メンバーチェンジもなく、地道に、誠実に歩み続けてきた彼らが、
この節目に選んだのは、原点と現在をつなぐ“音の結晶”のような作品でした。
制作は、Creedの再結成やSlashとのプロジェクトなど、
メンバーそれぞれが多忙を極める中で進められました。
それでも彼らは、音楽への情熱を失うことなく、
むしろその“飢え”を糧にするようにして、今作を完成させたのです。
そして何より象徴的なのは、
ギタリストのマーク・トレモンティが「一生に一度の機会」と語った、
エディ・ヴァン・ヘイレンの5150スタジオでのレコーディング。
その空間に宿る“伝説の残り香”が、今作に特別なエネルギーを与えています。
『ALTER BRIDGE』は、単なるベスト盤的な総括ではありません。
むしろ、これまでの20年を静かに抱きしめながら、
もう一度“自分たちの音”を見つめ直した作品なのだと思います。
🎧 音像・演奏──時代を超えて輝くサウンドの深み
今作『ALTER BRIDGE』の音像は、まさに“ヘヴィかつメロディック”という彼らの代名詞を再定義するような仕上がりです。
ハードロック、ポスト・グランジ、オルタナティブ・メタル、そしてプログレッシブな要素までを自然に融合させ、
60分を超える収録時間の中に、20年分の音楽的探求と進化が詰め込まれています。
まず耳を奪われるのは、マーク・トレモンティのギター。
重厚なリフと繊細なアルペジオが交錯し、
ときに荒々しく、ときに語りかけるように響きます。
特に“Silent Divide”では、初期のグルーヴ感を思わせる骨太な刻みと、
現代的な音圧のバランスが絶妙で、まるで過去と現在が握手しているような感覚を覚えました。
そして、マイルス・ケネディのヴォーカルは、今作でも圧巻です。
高音域の伸びやかさと、低音域の温かみが共存し、
どの曲にも“祈り”のような情感を宿らせています。
さらに今作では、マークとの交互ヴォーカルが随所に取り入れられており、
それぞれの声が持つ個性が、まるで“対話”のように響き合う瞬間が何度も訪れます。
リズム隊──ブライアン・マーシャルのベースとスコット・フィリップスのドラムも、
決して派手ではないけれど、楽曲の芯をしっかりと支える“地鳴り”のような存在感を放っています。
特に“Scales Are Falling”では、重く沈み込むようなリズムが、
歌詞の持つ内省的な世界観と見事に呼応していました。
プロダクション面では、マイケル・“エルヴィス”・バスケットの手腕が光ります。
5150スタジオでの録音という特別な環境も相まって、
音の一粒一粒に“空気の厚み”が感じられるような、
生々しくも洗練されたサウンドスケープが広がっています。
この音の深みは、きっと一度聴いただけでは掴みきれない。
けれど、何度も耳を傾けるうちに、
その奥にある“静かな情熱”が、じわじわと胸に染み込んでくるのです。
✍️ 歌詞テーマ──情緒と物語が描く世界観
Alter Bridgeの歌詞には、いつも“内なる声”に耳を澄ませるような静けさと、
それでも前へ進もうとする意志が宿っています。
今作『ALTER BRIDGE』でも、その本質は変わっていません。
先行曲“Silent Divide”では、
「いつまで黙っているつもりだ?」と問いかけるようなフレーズが印象的でした。
偽りや分断に満ちた現代社会の中で、
声を上げることの難しさと、それでも真実を見つめようとする姿勢がにじんでいます。
「頭を下げて、静かなる分断を乗り越えろ」──
この一節には、怒りや叫びではなく、
静かな覚悟と、揺るがぬ芯の強さが感じられました。
また、“Scales Are Falling”では、
繰り返される言葉の中に、苦境から抜け出したいという切実な感情が滲んでいます。
明確なストーリーを語るというよりも、
感情の断片を積み重ねていくような描写が、聴き手の心に余白を残してくれるのです。
こうしたテーマは、過去作にも通じるものがあります。
“Broken Wings”の孤独や、“Show Me A Leader”の社会への問いかけ、
“Addicted To Pain”の内面の葛藤──
Alter Bridgeは一貫して、人間の弱さと強さを同時に見つめてきたバンドなのだと、あらためて感じさせられました。
そして今作では、その視線がより静かに、深く、
“語る”というより“寄り添う”ような形で表現されているように思います。
🕰 文化背景・時代性──1980年代の風と初期衝動
2026年という今、Alter Bridgeがセルフタイトルのアルバムを届けてくれたことには、
時代の流れと静かに呼応するような意味があるように思えてなりません。
Creedの再結成が話題を呼び、
2000年代初頭のポスト・グランジやモダン・ハードロックが再評価されつつある今、
あの時代の音が、再び“必要とされている”空気を感じます。
そんな中でリリースされた『ALTER BRIDGE』は、
単なる懐古ではなく、過去と現在をつなぐ“橋”のような存在。
それは、バンド名そのものが象徴してきたテーマでもあります。
そして、エディ・ヴァン・ヘイレンの5150スタジオでのレコーディング──
この事実もまた、80年代HR/HMの精神と現代の音楽的成熟が交差する瞬間を象徴しているように感じました。
あの時代、MTVから流れてきたギターの音に胸を高鳴らせ、
レコード店でジャケットを手に取ったあの感覚。
Alter Bridgeの音には、そんな“初期衝動”の残り香が、今も確かに息づいています。
それは決してノスタルジーではなく、
時代を超えて響く“芯のある音”への信頼。
このアルバムが放つ温度は、
そんな音楽の本質を、そっと思い出させてくれるのです。
💿 新作としての意義──セルフタイトルが語る“今”のAlter Bridge
『ALTER BRIDGE』というタイトルを初めて目にしたとき、
私は思わず、静かに息を呑みました。
セルフタイトル──それは、バンドにとって最も純粋な自己紹介であり、
同時に“これが自分たちのすべてだ”と差し出す覚悟の表れでもあります。
8枚目にしてこの選択をしたという事実は、
彼らがこの作品にどれほどの想いを込めたかを物語っています。
アートワークもまた、シンプルでありながら力強い印象を残します。
過剰な装飾を排し、音そのものに語らせるような佇まいは、
まさに今作の本質を象徴しているようです。
また、Napalm Records移籍後の第2作として、
この作品はバンドの“第二章”を本格的に切り拓く一歩とも言えるでしょう。
前作『Pawns & Kings』で見せた多様性とスケール感を継承しつつ、
今作ではより内省的で、“自分たちの核”に立ち返るような音作りが際立っています。
リマスターや再発ではなく、
“今この瞬間にしか生まれ得なかった音”を刻んだ新作としての価値。
それが、このアルバムの最大の魅力なのだと思います。
🔥 全曲解説──『ALTER BRIDGE』を彩る魂のトラックリスト
Silent Divide — 原点のグルーヴが、静かに火を灯す
マイルスの鋭いリフから始まる、力強くもシネマティックなオープナー。
現代社会の分断を思わせる空気の中で、静かに立ち向かう意志がにじむ。Rue The Day — 後悔と希望が交差する、影のバラード
重層的なギターとメロディアスなサビが印象的。
過去の過ちを見つめながらも、どこかに光を探すような内省的な一曲。Power Down — 焦燥と再起動のヘヴィ・ドライヴ
アルバム随一のヘヴィネス。
燃え尽きた心に喝を入れるような、エネルギーに満ちたトラック。Trust In Me — 声が交差する、信頼の葛藤
マイルスとマークがヴォーカルを分け合う構成が印象的。
孤独の中で誰かを信じることの難しさと温かさが、静かに響く。Disregarded — 疎外の中で灯る、再生の火種
ざらついたグランジ感と、催眠的なヴォーカルが交錯する。
置き去りにされた者たちへの、ささやかなエール。Tested And Able — 試される意志、交わる声
今度はマークがヴァースを、マイルスがサビを担当。
剥き出しの感情と洗練された旋律がぶつかり合い、熱を帯びる。What Lies Within — 内なる力と向き合う、王道の一撃
うねるリフと強靭なリズムが牽引する、モダン・ハードロックの真骨頂。
まだ見ぬ自分自身との対話がテーマ。Hang By A Thread — 糸一本の希望にすがる夜
アコースティックを基調とした繊細なバラード。
「Watch Over You」を思わせる、胸に染み入る静けさが美しい。Scales Are Falling — 鱗が落ちる瞬間の衝撃
約6分の荘厳なナンバー。
欺瞞に気づき、現実を直視する“目覚め”のような感覚が広がる。Playing Aces — 最後の一手に賭ける覚悟
アップテンポでライブ映え必至の一曲。
ギャンブルを人生に重ね、失敗を恐れず進む姿勢を描く。What Are You Waiting For — 静かな挑発、行動への誘い
社会の喧騒から距離を置き、自らの足で歩むことを促す。
バンドからリスナーへの“目覚まし”のような楽曲。Slave To Master — 壮大なる終章、9分間の叙事詩
静かな導入から、バンド史上最もドラマチックな展開へ。
人間性と制御の境界を問いかけるような、現代的な余韻を残すフィナーレ。
※各曲の“意味”や“テーマ”については、公式発言ではなくレビューや歌詞からの解釈をもとに構成しています。
読者の皆さんも、ぜひご自身の耳と心で感じ取ってみてください。
❤️ ここが熱い!筆者が推す“本作の刺さるポイント”
Alter Bridgeの音に初めて触れたのは、
まだCDショップの試聴機に人が集まっていた頃のことでした。
あの頃の私は、ハードロックの熱と哀愁を胸に刻みながら、
新しい時代の音にどこか戸惑いも感じていたのを覚えています。
そんな自分にとって、今作『ALTER BRIDGE』は、
“あの頃の熱”と“今の静けさ”が同居するような、不思議な一枚でした。
特に心を掴まれたのは、“Hang By A Thread”。
アコースティックの響きが空間を優しく包み込み、
マイルスの声が、まるで誰かの肩にそっと手を置くように寄り添ってくる。
この曲を聴いていると、音楽が“支え”になる瞬間というのは、
こういうことなのかもしれない──そんな気持ちになります。
そして、“Slave To Master”。
9分を超える壮大な構成の中に、
Alter Bridgeがこれまで積み重ねてきたすべてが詰まっているように感じました。
静と動、理性と衝動、伝統と未来。
そのすべてが交差するこの曲は、今作の“魂”そのものだと思います。
まだリリースから日が浅く、
聴き手それぞれの中で“育っていく”段階のアルバムかもしれません。
でも、だからこそ──
今この瞬間に感じた“刺さり”を、言葉にしておきたかったのです。
もし一曲だけ挙げるとしたら、 あなたにとっての『ALTER BRIDGE』は、どの曲でしょうか。
🎵 関連レビューと次のリスニングへの誘い
Alter Bridgeのレビューは、実は今回が初めてになります。
けれど、フロントマンであるマイルス・ケネディのソロ作については、これまでに2作レビューしてきました。
- 🎸 『Year of the Tiger』レビュー|カッコ良いハード・ロック作品であり、静かな祈りのような一枚
- 🌿 『The Ides of March』レビュー|静けさと熱が交差する、マイルスの“語り”の極み
どちらも、今作『ALTER BRIDGE』に通じる“内省”や“誠実さ”が色濃く表れており、
今回のアルバムをより深く味わうための“前日譚”のような存在です。
マイルスの声に惹かれた方は、ぜひこちらのレビューも覗いてみてください。
👨🎤 Personnel(参加ミュージシャン)
Vo / Gt:Myles Kennedy
繊細さと力強さを併せ持つヴォーカル。今作ではマークとの掛け合いも印象的。Gt / Vo:Mark Tremonti
重厚なリフと叙情的な旋律を自在に操るギタリスト。ヴォーカルとしての存在感も年々増している。Ba:Brian Marshall
バンドの屋台骨を支える安定感。グルーヴの深さが今作でも光る。Dr:Scott Phillips
タイトで表情豊かなドラミング。静と動の緩急を巧みに演出する。Producer:Michael “Elvis” Baskette
長年のパートナーとして、Alter Bridgeの音を知り尽くした存在。
今作でもその手腕が随所に発揮されている。
作品を聴く
レビューを読んだあとは、ぜひ実際の音で“この世界”を体感してみてください。
※動画は「Alter Bridge - ALTER BRIDGE」公式YouTubeプレイリストより引用
映像とはまた違う“音の表情”を感じてみるのも素敵です。
さらに深く楽しむために ── 購入・シェア・補足情報
▶ 記事情報を開く
記事情報